ば、もともとだ。もうだめだからと言って、負けるつもりになっていることがいけないんだ。せめて日本人は、建国精神によって、はなばなしく戦ってもらいたいなあ。火星兵団に降参してしまったなどという、ふがいない歴史なんか、残してもらいたくない」
 佐々刑事は、火星の上に、ただひとりがんばって、はるかに地球の人々を励ましたのであった。


   46[#「46」は縦中横] 彗星対策《すいせいたいさく》


 三月の十何日ごろから、肉眼でもモロー彗星が見えるようになった。
 モロー彗星の位置は、南東の地平線に近い空であった。太陽が西に沈んで、あたりがほのかに暗くなると、うっすり[#「うっすり」はママ]と青白い光の尾をひいたこの妖星は、急にかがやき始める。
 日が暮れかかると、誰も彼も言い合わせたように南東の空に首を向けた。家々の窓には家族中の顔がならび、道行く人は立ちどまり、あっちに一かたまり、こっちに一かたまりと、不安な面をそろえる。
 モロー彗星は、そういう地球の上の騒ぎを知ってか知らないでか、絵にかいたようにしずかに、低い空にかかっているのであった。無言の威圧だ。
「あれが、モロー彗星ですか」
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