。だから、ここにはなんにも書くまい。
博士が、放送を終えて室を出ると、そこには、その筋の掛官が待っていた。おだやかでない博士の放送を聞いて、すぐさま自動車で駈附けたらしい。
博士は、その場からその筋へ伴なわれていった。そうして大江山課長という掛官で一ばんえらい人から、「しゃべってはならない」と命令された。
「なぜしゃべっては悪いのですかな。わしは苦心の末『火星兵団』という意味の光を空中に発見した。そうして、それはまさに人類にとって一大事だ。それをしゃべって悪いと言われる貴官の考えがわしにはわからん」
と、蟻田老博士は不満をうったえた。
「いや、その――『火星兵団』という意味の光を空中に発見した――というのが、困るのです。そんなばかばかしいことが、出来るとは思われない。火星を警戒しろというのはかまわないが、あなたが観測中に何を知ったか、その内容については、後で解除命令のあるまで、誰にもしゃべってはなりませんぞ」
大江山課長は、きつい顔で申し渡した。
ふしぎな謎の言葉「火星兵団」!
蟻田博士の放送によって「火星兵団」のことは、日本全国津々浦々にまでつたわった。そうして、その時ラ
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