蟻田博士は、くらがりでもよく目が見えるらしく、立上ると、何かしきりに機械を廻している様子だ。
 がらがら、がらがら。
 高声器の中から、雑音が出て来た。空電がはいっているらしい。博士は、なぜ高声器を働かせているのか。
「博士、どうしたのですか」
 と、新田先生はたずねた。
 だが、博士はそれに答えなかった。その代りに、高声器の中からはげしい雑音に交って、何かしきりにわめきちらしているような人の声が聞える。
 その声は、はじめ、たいへん小さかったが、しばらくすると、雑音以上に大きくなって来た。しかもその声が、日本語でしゃべっていることがわかった。
(誰だろう?)
 先生は、くらやみの中で、きき耳を立てていた。その声は、大きくなったけれど、何を言っているのか、言葉の意味がはっきりしない。しかし、その中で、
「おい、聞いているか、日本人!」
 という言葉が、くりかえされたことがわかった。
 先生は、それを聞いている中に、言葉の調子から、一人の人物を、ふと、心の中に思い浮かべたのであった。それは外でもない。刑事の佐々《さっさ》のことであった。
(佐々刑事の声によく似ているがなあ)
 と、
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