物はだんだんはっきりして来た。
「ほう、これは彗星だ!」
 と、先生は思わず、おどろきを声に出してさけんだ。
「そうだとも、もちろん彗星だ」
「すると、この彗星はもしや……」
「もしやも何もない。それがモロー彗星なのだ。おどろくべき快速度をもって、刻々地球に近づきつつあるモロー彗星なのだ」
 博士の声が、くら闇のかべにあたってひびいた。
 ああ、モロー彗星!
 これが、モロー彗星であったか。地球人類、いや地球上の全生物のいのちをうばっていこうとする魔の彗星はこれであるか! 新田先生は、真暗な空に異様なすがたを見せているこの彗星を、食いいるように見つめている。
「どうして、こんな地底からモロー彗星が見えるのでしょう。博士、これは、どうしたわけですか」
 新田先生は、博士にたずねた。
「よけいなことは聞かないがいい。それよりも、モロー彗星をよく見ておくがいい。間もなく、雲にさえぎられて見えなくなってしまうから……」
 博士は言った。
 新田先生は、博士に叱られながらも、地底から見えるこの望遠鏡の不思議について考えた。空が見えるからには、この望遠鏡のあたまは空へ向けて出ていなければならない。
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