いと見てとって、後から呼びとめた。ところがあやしい三人は、それが耳にはいらないのか、ずんずん向こうへ歩いていく。
「もしもし、お待ちなさいと言ったら」
 若い駅員は、かけ足で三人の後に追いついた。三人は、一せいに後を振向いた。おやというようなかっこうをした。一つのマントが、ぱっとひるがえったように思われた。とたんに、若い駅員の姿も消えうせた。
 火星人の人間狩のことを書きつづけていくと、大変恐しくもあり、またおもしろいが、きりがない。
 人間狩をする火星人は、うっかりしている人間ばかりを襲ったので、かなりたくさんの人間が、さらわれていながら、その割に、被害報告が、すぐには警視庁へは集らなかった。それがますます火星人をして、人間狩に成功させ、彼らを喜ばせたのであった。
「火星人は誰にもそれとわかる、黒い帽子に、黒い長マントを着ています」
 と、拡声機からは、特別公示事項の放送が、ほとんど絶えまなく行われた。しかしそれは、もう午後になってからのことで、かなりたくさんの人間が、さらわれてしまってから後のことであった。
「でありますから、黒い帽子に黒い長マントに、黒い眼鏡の怪しい人物を見かけた
前へ 次へ
全636ページ中335ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング