や、むしろ大変遠い声だと言った方がいいであろう。小さい声だが、大変はっきりした言葉である。それがしきりにしゃべっているのである。
「……だから、我々は、短い時間のうちに、この重大な仕事をやってしまわなければならない。さもないと我々火星兵団が、危険を冒し、こうして地球上へ来たことが、まったく、むだになる。……」
 はっきりと、そういう声が、新田先生に聞えたのである。
 先生は改めて、びっくりし直した。なぜと言って、この言葉の中には、明らかに、「火星兵団」と言う言葉があった。それから「こうして地球上に来たことが……」などと言っている。この言葉は地球の上で、火星兵団の中の一人が、しきりにしゃべっている言葉らしいことがわかる。それにしても、人間にわかるような言葉(実にその言葉は、日本語だったのである)を使っているのはなぜであろうか?
 先生はあることに気がついた。
 新田先生は、積んである機械の箱の中に、そっと手を差入れた。
 幸いにも、箱の蓋があいているものがあったので、中の機械をさぐることは、思いの外やさしかった。
(おお、これは妙なものだ。電話機のような形をしているぞ)
 先生は、手さぐ
前へ 次へ
全636ページ中311ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング