「しずかに、声を立ててはいけない!」
怪人丸木が、とつぜん口を開いた。その声は、あたりをはばかるような低い小さい声だった。
先生は、二度びっくりであった。なぜなら怪人丸木の唇がたしかに動き、その中からは白い歯も見えた。丸木だけは、他の火星人と違って、作り物の首を肩の上にのせていないのか。
「……」
新田先生は、声もなく恐怖の色を浮かべた。全く、どんなに考えても、正体のわからない奴は、この丸木だ!
「新田先生、何とか返事をしなさいよ。おっとおっと、大きな声を出してはいけない。火星人だの、それから丸木なんかに知れると大変なことになる」
怪人丸木は、先生の耳のそばに口をつけて、ささやくように、こう言った。
「えっ、丸木に知れると大変だと言って……丸木は君じゃないか」
「違う違う。丸木じゃない。わしだよ。新田先生。わからないのかい」
「えっ、君は、誰?」
「わしだよ、佐々《さっさ》刑事だ」
「ええっ、佐々刑事? へえ、佐々さんですか。ほんとうですか」
新田先生は、あまり話が意外なので、信じてよいかどうか、大迷いのかたちであった。
「よくわしの顔を見たまえ。へんな仮装のお面をかぶって
前へ
次へ
全636ページ中297ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング