、ぶらぶらと室内を歩き出したものである。
その時、また奇怪なことを発見した。その動物には、人間や獣にあるような胴というものが見当らなかった。いや、胴はあるにはあるがたいへん細く、そうして短く、枕ぐらいの大きさもなかった。
足はあった。その足を使って怪物は立上り、床の上をゆらゆらと動いているのだった。
その足のまわりに、長い手のようなものがぶらぶらしているのが見えたが、その長い手はむしろ、蛸の八本の足に似ていて、ぐにゃぐにゃしていた。しかし、ずいぶん細い手であった。
細いのは手だけではない。足もまたひょろ長いが、乾大根のように細い。
「どうも、不思議な動物だ」
と、新田先生は、低くささやいた。
「熱帯地方にいるくも猿は、手や足がたいへん長い。胴は、ほんのぽっちりしかないように見える。だから、くも猿かしらんと思ったが、そうでもなさそうだ」
「先生、やはり大蛸ではないのですか」
千二は、やっと、自分の考えを言ってみた。蛸とはちがったところがあるが、しかし、蛸に一ばんよく似ているのであった。
「そうだね。蛸と思えないこともないが、蛸にしては、檻の中で、あんなに活発に生きているのが変
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