している「火星兵団」が、ありもしないでたらめであるとして、眉をひそめていたのである。
「火星兵団」に関する老博士の第一声は、今から一カ月ほど前、事もあろうに、放送局のマイクロホンから、日本全国に放送されたのであった。その夜の放送局内の騒ぎについては、すぐ記事さしとめの命令がその筋から発せられたので、世間には洩《も》れなかったが、実は局内ではたいへんな騒ぎで、局長以下、みんな真青になってしまい、その下にいる局員たちは、仕事もなにも、手につかなくなってしまったほどだった。
その夜の蟻田博士の講演放送というのは、なにも「火星兵団」のことが題目になっていたわけではない。そんなものとはまるで関係のない「わが少年時代の思出」という立志伝の放送だった。
ところが、その途中で、老博士は急に話をそらせ、講演の原稿にも書いてないところの「火星兵団」について、ぺらぺらしゃべりだしたのであった。
つまり、こんな風であった。
――ええー、ところでわしは、最近重大な発見をした。それはわれわれ地球人類にとって、実に由々しき問題なのである。事のおこりは一昨日の午前四時、わしはまだ明けやらぬ夜空に愛用の天体望遠
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