んです」
 聞けば聞くほど、あぶない命のせとぎわであった。よくぞ千二少年は、一命が助かったものであった。
 堤下の、さつき[#「さつき」に傍点]の繁みの中に、気を失っていたので、あとをおいかけていた警官は、そばまで来ながら、千二がいることには、気がつかなかったものらしい。
 いや、警官たちは、それよりも、崖下に落ちていった自動車のことばかりに、気をうばわれていたのかも知れない。自動車は、怪人丸木をのせたまま、崖から下へ落ちていった。そうして、めちゃめちゃにこわれてしまい、やがて車体は火に包まれてしまったのだ。誰も彼も、この方に注意をうばわれたのは、もっともだった。
「ふうん、全く、驚いた話だ」
 と、新田先生は、大きな息をついて、千二少年の命びろいを喜び、
「その運転手は、怪人丸木にちがいないかね」
「丸木ですよ。僕は、丸木の顔をよく知っていますから、見ちがえるようなことはありません」
「ふうむ、やっぱり、ほんとの怪人丸木か。あいつは、もう、こっちにはいないだろうと思っていたのに」
「先生、丸木は、僕をさらって、何をするつもりだったんでしょうか」
「さあ、それも、私の思いちがいだった。
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