はないか」
新田先生は、目をぱちくりした。
全く何もないのであった。
「不思議だ、不思議だ。これは不思議だ」
先生は、あまりの意外さに、つづけて同じ言葉をはいた。
どう考えても変である。博士があれほど注意を払って、大切にしている部屋であるにもかかわらず、床ばかりで、何物もおいてないというのは、腑に落ちかねる。
もっとも、鼠色によごれた壁には、背の高い柱時計がかけてあった。しかもその柱時計は、なぜかわからないが、並べて二つかけてあった。
どっちも、たいへん古めかしい飾りがついている、振子形の旧式時計であった。
振子は、どっちの時計の振子も、とまっていた。つまりうごかない二つの柱時計が、このがらんとした秘密室の留守番であったのである。
「まてよ、この二つの柱時計が、値打のある宝物なんかではなかろうか」
新田先生は、柱時計がかかっているその下まで出かけていって、それをていねいに何度もよく見たのであった。
たしかに古くて、時代がかったものであったが、作りもそうりっぱなものではない。むしろ安時計と見てもいいものだ。
「変だなあ。なんとなくわけがありそうな時計だけれど、どうもわけ
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