士がやっていることが、手にとるように、わかってしまうのだった。
その部屋の中には何があるのかは、まだわからないが、これほど大切な鍵ならば、それをいつもポケットに入れておけばいいと思うのに、博士は用のない時は、鍵を持っているのがきらいらしく、いつも大引出の中へしまうことにしていた。
「ああ、あった。これだ、鍵は!」
新田先生は、大引出の中の書類の下にかくしてある鍵を、ついに見つけ出したのであった。
「さあ、今のうちだ」
新田先生は、蟻田博士の机から、鍵を取出すと、いそいで廊下へ飛出した。その奥には、博士が秘密にしている部屋がある。
恩師の秘密にしている部屋を、その許《ゆるし》もなくて、ぬすんだ鍵であけてはいるなんて、けっしていいことではなかった。しかし、ぜひともそれをしなければ、気のすまない新田先生であった。
先生には、一つの信念があったのである。それは、秘密室へしのびこむのは、悪いことではないと信じていたのだ。なぜならば自分だけがとくをするために、むやみに他人の秘密室にはいるのは、どろぼうみたいなものである。しかし新田先生は、自分だけのとくを考えているのではない。そうすること
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