いか」
「だって、課長さん。ガソリンに火がついて、たいへんはげしく燃えたため、骨もなんにも、すっかり跡形なく焼けてしまったんではないのですか」
「ガソリンが燃えたくらいで、骨が跡形なくなってしまうだろうか。そんなことはない。骨はもちろん残るはずだ。まあ、黒焦死体がころがっているというのが、あたりまえだ」
「じゃあ、ガソリンではなく、もっと強く燃えるものがあって、それが、骨まで焼いてしまったのじゃありませんかね。たとえば、焼夷弾《しょういだん》みたいなものが、自動車に積んであったと考えてはどうです」
「それもおもしろい考え方だ。しかし、たとえ焼夷弾が燃出したとしても、そこから少し離れた所にあるものは、焼け残るはずだし、ことに、骨が一本残らず燃えてしまって、灰も残っていないというのは、ちと変だね」
 課長は、小首をかしげた。
 佐々刑事は、いらいらして来た。
「課長。どうも変だというだけじゃ、困りますねえ。で、その事について何かいい答えをもっているのですか」
「うん。だから私は、こう考えてみた。とにかく、この自動車に乗っていた人間は、生きていると思う」
「えっ、生きている。まさか――」
 
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