うか。いや、人類の好くと好かないとにかかわらず、現にモロー彗星は、刻々地球に追っているのだ。
「助かる方法はないでしょうか、博士」
蟻田博士は、だまって、鉛筆で、白い紙のうえを叩いている。
「ねえ、博士。モロー彗星のため地球がぶち壊されても、何とかして、我々人類が助る方法はないものでしょうか」
「ないねえ。絶対に助る手はない」
博士は、他人のことのように言う。博士はどうなるのか。博士だって、やはり人類である以上、一しょに死ぬのではないか。それとも、自分だけは助るつもりであろうか。
「先生は、生命を全《まっと》うされますか」
「いや、むろんわしも死ぬさ」
博士は、新田め、何をわかりきったことを聞くのだと、言いたげな顔であった。
新田先生の最後の頼みの綱も、ついに切れた。先生は、千仭の断崖から、どんと下へ突落されたように思った。もう立っていることが出来ないほどだった。
(だが、――)
と、新田先生は、その時口の中で言った。
(だが、万物《ばんぶつ》の霊長《れいちょう》たる人間が、そうむざむざと死滅してなるものか!)
人間というものは、どうにも、もういけないときまった時に、不思議
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