、はっきり身のあかしが立たないじゃないか。とにかく、課長からすぐ放免せよという電話でもなかった日には、まだまだ共犯のうたがいでもって、ここへ止めおかれるところだよ。くれぐれも、これからのことを注意したまえ」
「はい」
「あの丸木なんかと、一しょに、悪いことをやるんじゃないよ。それから一つ、君にたのんでおくが、もし君が、どこかで丸木を見かけたら、すぐこの私《わし》のところへ、知らせてくれ。どこからでもいいから、電話をかけてくれればいいんだ。ほら、この名刺に電話番号が書いてある」
 千二は、佐々にいろいろと、たしなめられたり、たのまれたりして、警視庁を出ていったのである。
 そこは、桜田門のそばであった。千二はふたたび自由の天地に放たれたことを喜び、まるで小鳥のように、濠端をとびとびしながら、日比谷公園の方へ駈出していった。
 公園の垣根のところまで来ると、千二は、そこに一台のりっぱな自動車が、運転者もいないで放りっぱなしになっているのに気がついた。

 公園のそばに、放りっぱなしになっている無人自動車は何であったろうか。
 千二は、人一倍機械なんかが好きであったから、このりっぱな自動車を
前へ 次へ
全636ページ中120ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング