ははは、お前は、この師の学力が、どんなに大きく、かつ深いものであるかを知らないとみえるのう。まあ、やってみるがいい。誰のところでもいい、天文学者という学者のところを歴訪して尋ねてみるがいい。恐らく、それに答えてくれる学者は、一人もいないであろう。いや、第一、モロー彗星が地球に衝突することすら、誰も気がつかないであろう。ふん、自慢じゃないが、世界広しといえども、わしよりえらい天文学者は、ただの一人もいないのじゃ」
そう言って、蟻田博士は、ここちよげに、からからと笑った。
蟻田博士の、恐るべき自信!
モロー彗星と地球とが、やがて衝突するだろうことを知っているのは、世界広しといえども自分一人だと言う。
あまりにも、大きなことを言いすぎるではないか。
だが、新田先生は、博士が大ぼらを吹いているのだと、一がいには、きめられないと思った。なぜなら、博士が実にすぐれた学者であることは、その昔、博士の下《もと》で助手のようなことをしていたので、そのころからよく知っている。そのころアメリカのウィルソン山の天文台に、テーラーという博士がいたが、その人こそ、その頃における世界一の天文学者だった。そ
前へ
次へ
全636ページ中105ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング