もっているはんらん軍は、全滅になるはずだ。ふん、これなら大丈夫うまくいくぞ」
 ペペ山にたてこもる王子ロロ公爵軍を一どきにやっつけてしまおうと、火星兵団長の丸木は、地底戦車隊に出動を命じた。
 そばにいた千二は、これを知ってたいへんだと思った。ペペ山の下が、地底戦車のためくりぬかれ、下から爆破されると、ロロ公爵も一しょに、こなごなになってしまうであろう。
「丸木さん。折角かえって来たロロ公爵を、そんなひどい目にあわせないで下さい」
 と、千二は忠告をこころみた。
「いや、いいんだよ。これが戦争なんだ。第一、おれにそむく奴なんか、一刻も、生かしておけないよ」
「丸木さん、あなたは自分のことばかり考えて、火星国全体のことを考えないから、いけないと思うなあ」
「いや、いずれはおれが火星国を、おさめるようになるのさ。おれが一度号令すると、火星兵団は手足のように、うごくのだ。だから、今の火星王よりは、ほんとうは、おれの方がえらいのさ」
 丸木は、たいへん思いあがっているようである。
「丸木さん、それはよくない考えだよ。きっと、今に自分で自分がわるかったと、さとるときが来るだろう。僕は、ほんとうの力もないのに、からいばりをしたり、むちゃをする者は大きらいだ」
「なにを。千二、なまいきな口をきくと、ただではおかないぞ」
 そう言っているとき、はるかのかなたから、ごうごうと大きな音が近づいて来た。
 丸木兵団長は、その音を聞きつけると、とびあがってよろこんだ。
「ああ、来たぞ。地底戦車隊だ。さあ今にみろ。ロロ公爵も、元の王子も、これで灰になって空へまいあがるだろう。どりゃ、一つゆるゆる見物するかな」
 と丸木は、にやりと笑って、ペペ山の方にむきなおった。


   71[#「71」は縦中横] 硝煙の岡


 千二少年は、ペペ山がこれからどうなるかについて、しんぱいであった。
 しかし、丸木のようすを見ていると、丸木はペペ山の爆破に夢中になっていて、千二のいることをわすれている。
(あ、今だ。にげだすのは……)
 ペペ山のこともしんぱいだが、千二は、早く蟻田博士や新田先生のもとへ、かえりたかった。それで千二は、丸木のすきをうかがって、そこをにげだした。
 にげだしたはいいが、どっちの方へいっていいのか、わけがわからなかった。
「困ったなあ。さっきは、こっちの方からやって来たように思うが……」
 千二は足にまかせてどんどん走った。
 わずかの心おぼえが、彼をうまくみちびいて、どうやら元の海岸が見えだしたときには、おどりあがってよろこんだ。
「ああ、よかった」
 千二はカリン岬を前にして、海岸に立ってあたりを見まわした。
「おや、博士は? 先生は? どこへいったか、まだ見えない」
 浜はがらんとしていた。
 博士のすがたも見えなければ、新田先生もいない。そればかりか、大空艇さえ見えないのであった。
「先生! 博士!」
 千二は大きなこえをだして、いくどもよんでみた。
 だが、千二のこえは、こだまとなって、かえって来るばかり。
 千二はちょっとよわった。
「どうしたらいいだろう」
 そのとき、千二のあたまに思いうかんだことがあった。このカリン岬の下に、秘密の洞窟があることを思い出したのであった。
「ひょっとすると、博士たちは、そこにいるのではなかろうか」
 そう思った千二は、なんとかしてそこへはいってみようと思い、洞窟への入口をさがしはじめた。
 カリン岬の下の洞窟へは、どこから、はいったらいいのであろうか。
 千二少年は、岩山のあたりをあっちこっちとさがしまわった。だが、その入口はなかなか見つからなかった。
「ああ困ったな。どうしたらいいだろうか」
 千二は、だんだん心ぼそくなって来た。
 だが、こんなところでよわい気を出しては、いよいよ死を早めるばかりだと思ったので、彼は胸を叩いて、なにくそと一生けんめいに自ら元気をふるいおこした。なんべんも胸を叩いているうちに、どうやら元気づきもし、気もおちついて来た。そこで彼はもう一度砂浜の方へおりていった。なにか手がかりはないかと、それを見つけるつもりで……。
 すると、彼はついに、うれしい手がかりを発見した。砂浜の上に、大きい矢印が書いてあるのであった。
「千二ヨ、タズネルモノハ、コノサキニアル。ワレワレハ、ナカデマツ」
 たずねるものはこの先にある、われわれは中で待つ――と、砂の上に片仮名で書いてあったのだ。
 たずねるものというのは、洞窟への入口のことであろう。中とは、洞窟の中のことにちがいない。われわれとは、蟻田博士と新田先生のことであろう。
「さっき、二度も三度も、このへんを歩いたんだがな。さっきは、これが見えなかった。やっぱり、あわてていたせいだろう。あわてるのは、そんだなあ」
 千二は、はずか
前へ 次へ
全159ページ中154ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング