んとはねて、どたんと下にたおれた。そうして手だか足だかわからないが、首の下についている細いものを、にゅうっと四方へのばした。と思うと、こんどは急にその手足をくるくるっと短い胴の下へまいた。そうして、まるで青い南瓜《かぼちゃ》を二つかさねたようなかっこうになって、うごかなくなった。千二は、それがあまりふしぎであったので、あとのふき矢をふくこともわすれて、見とれていた。
「おい千二君。火星兵がだいぶん、たくさん来たよ。早くふき矢をとばすのだ」
 と、新田先生は千二にちゅういをした。
「はい。ふき矢を飛ばしますよ」
 千二は、先生にさいそくされて我にかえると、こんどは、つづけざまに、ふき矢を飛ばしはじめた。
 しゅうっ、しゅうっ、しゅうっ。
 こんどは、よくあたる。調子さえわかれば、千二の方が先生よりも上手であった。なにしろ千二はふき矢をこしらえて、森の中で小鳥をとるのが、なかなか自慢であったのだから……。
 火星兵は、わめきながら、こっちへ向かって来る。こんぼうみたいなものを、ふりあげて来るところは、なかなかすさまじいものであった。
 そこへ、ふき矢が飛んでいって、ぴしりぴしりとあたる。おもしろいほど、よくあたる。あっちでもこっちでも、火星兵がからだをちぢめて、ごろごろころがっている。
 ふき矢があまりよくあたるので、火星兵は少しおそれをなしたようすであった。今まで勢いよく突撃して来たのが、いつとなく足もとがみだれ、そのうちに、森の中から一歩も出て来なくなった。そうして、木の幹の間や岩のかげから、あたまだけを出して、こっちをじろじろと見ている。
「先生、こっちが勝ったようですね」
 と、千二は、先生に声をかけた。
 ところが、先生のへんじがない。
「先生。おや、先生は、どこへいったかな」
 千二は、びっくりして、あたりを、きょろきょろとみまわした。
 さあたいへん。先生の姿は、そこになかった。先生の姿だけではなく、博士の姿もないのだ。見えるのは、前面からこっちをにらんでいる十数人の火星兵のあたまばっかり……。
「あれっ、先生も博士も、どこへいってしまったんだろうな」
 千二は、急に心ぼそくなってしまった。これは一体どうしたというんだろう。


   69[#「69」は縦中横] まきつく触手


 千二は、わすれられたように、ひとりぼっちになってしまったが、博士と先生とは、どうしたのであろうか。
 新田先生は、ふき矢をもって火星兵とたたかうことに一生けんめいだった。
 なにしろ、火星兵は、新田先生が一等つよい敵だと思ったので、これをたおせばいいと思い、先生をめがけて、さかんにせめたてたのである。
 そこで先生は、千二のことを気づかっているひまがなくなった。
 ふき矢をこめてはふき、こめてはふき、いきのつづくかぎり向かって来る火星兵をなぎたおした。もし、ただの一人でも近づけたら、たいへんなことになるであろう。それというのが、火星兵のもっているこんぼうみたいな武器は、先生の酸素かぶとを、上から、うちくだいてしまうだろう。火星兵は小さいくせに人間よりも、ずっと力がつよいのであった。
 ひゅう、ひゅう、ぷく、ぷく、ぷく。
 火星兵はますますいらだって、先生めがけておしよせて来る。
「まだ来るか。来るならいく人でもやって来い」
 先生は、そう言って自分をはげましながら、どんどん前へ出ていった。少しでも、こっちがひるんだようすを見せると、火星兵はそこをつけこんで、一度に、わあっとせめて来そうである。だから先生は、あくまでつよ気を見せ、むしろこっちから、すすんでいくのがいいと思った。
 それはたしかにききめがあった。火星兵どもは、とおくから奇声をあげてさわぎながら、だんだん森の中へあとずさりをはじめた。
「うむ、ここだぞ。火星兵どもが二度と出て来ないように、こっちから、おしていってやれ」
 新田先生は、なおもぐんぐんと前に出ていった。そうしているうちに、しぜん千二のいるところから、へだたってしまったのである。
 蟻田博士はどうしたのであろうか。
 博士は、丸木と向かいあっていた。
 どっちも口をきかないで、睨《にら》みあっていた。聞えるのは博士の息づかいと、そうして丸木のからだのどこからか、しゅうしゅうと響いて来る怪しいもの音だけだった。
 丸木の目は、へんにとびだしている。一体丸木の顔というのがでこぼこしている。松の木の根もとを掘ると松露《しょうろ》というまるいきのこが出て来ることがあるが、それを、もう一そうでこぼこしたような感じの顔であった。目は三つあったが、正面から見ると二つしか見えないから、これは人間の顔とそっくりであった。もう一つの目は顔の後にあった。だから、後を見ようと思えば見える。
 目のついているところは、河馬《かば》の目のように
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