たような火星人の顔があらわれた。ペペ王だった。画面のペペ王が口を開くと、そこからペペ王の声が出て来るのであった。
 千二は、かくべつおどろいた様子もない。
「はい、ペペ王。何の御用ですか」
 丸木は、椅子に腰をかけて、落着いて言った。
「こら、マルキ。お前の監督はよろしくないぞ」
 と、とつぜんペペ王のお叱《しか》りだった。
「はて、何をしくじりましたかな」
 丸木は、口ほど驚いていない。
「きのうだったか、そっちから火星へ戻って来た宇宙艇があった」
「なるほど」
「お前も知っているのだな。――その宇宙艇は、着星したのはいいが、いつまでたっても誰も出て来ないのじゃ。入口の扉をどんどん叩いても、中からあけようともしない。仕方がないから、こっちから通信でもって、『おい、早く扉をあけて出て来んか。何をぐずぐずしているのか』と言っても、さらに答えなしじゃ」
「ほほう。それは、けしからん」
「通信が中へ聞えないかと思うと、そうでもない様子だ。中には、火がついたり消えたりもするし、それからまた中から電波を発射していることもわかっている。そのくせ扉をあけないのじゃ」
「逆乱軍でしょうかな」
「えっ、逆乱軍? おいほんとうか。そんなものが起るわけはないのだが……。とにかく宇宙艇の扉と来たら、内側からあけないかぎりは、外からはどんな事をしても、あかない仕掛になっている。全く困ってしまったよ」
「それは困りましたな」
「おいおい、マルキ。お前が涼しい顔をしていては困るじゃないか。お前の監督が悪いから、このような命令を聞かない者が出来るのじゃ。しかも、この宇宙艇は、たしかに、地球派遣軍の火星兵団に属している宇宙艇だから、お前が責任をとらなければならないぞ!」
 と、ペペ王はかんかんにおこっていた。
 でも、丸木は言った。
「なるほど、それは、私の責任かも知れません。しかし実際を考えてみて下さい。今地球と火星との間を連絡するために、火星兵団は、毎日のように宇宙艇を幾台も飛ばしているのです。中には、内側からあかない宇宙艇もあるかも知れません」
「何を言う、マルキ!」
 ペペ王は、大きな声を出した。
「わしがお前に言いたいことは、宇宙艇の警戒を怠って、むざむざ人間に取られてはならぬと言うことだ。人間とて、相当頭が進んだ生物だから、宇宙艇の中を知れば、同じものをまねしてつくるかも知れない。もしそんなことがあったら、我々は人間から、さらに強い手向かいを受けることになって、困るのじゃ」
「大丈夫です。そんなえらい人間はいませんよ」
「そうではない。むかし、この火星へアリタ博士というのがやって来たが、彼などは、なかなかすぐれた頭を持っていた。ああいう連中に見せたら、後がよくない」
「ですがペペ王、モロー彗星は、あと十日ぐらいして地球を粉々にこわしてしまうのですよ。ですから、たとえ宇宙艇を人間に見せたところで、あと十日では、そのうちの一台だって作り上げられませんよ。心配は御無用です」
 丸木は、落着き払って言った。
「ふん、まあ、せいぜい気をつけてくれ」
 と、ペペ王はようやく折れた。
「で、その占領された宇宙艇は、この後どうなさるのですか」
 と、今度は丸木がたずねた。
「うん、仕方がない。中にいる火星人には気の毒だが、宇宙艇ごと、粘液で、とかしてしまうつもりだ」
 と、ペペ王は放言した。


   50[#「50」は縦中横] 連合脱出隊


 中天にかかる恐怖の星モロー彗星は、日ごとに大きくなり、光力を強めていった。
 もうそのころには、夜間だけではなく白昼でさえも、モロー彗星が空に浮かんで見えるのだった。
 夜になると、モロー彗星は、にわかにらんらんと輝き出すのであった。その大きさは、もう月の半分ぐらいになった。月が空に二つ、かかっているようにも見える。全く怪しくも不思議な光景であった。地球の人々は、モロー彗星の光が強くなればなるほど、興奮の度をたかめた。
 半分おかしくなっている者や、道ばたで一日中泣きどおしの者が、だんだんふえて来た。そうかと思うと、盛にステッキや剣を空に向けてうちふり、
「モロー彗星なんか何者じゃ」
 と、見えすいた強がりを言っている者もあった。
 その一方において、科学者や技術者たちは、その大半が工場につめて、わきめもふらずに、地球脱出用のロケットを製造することに、一生けんめいであった。彼らは、時にモロー彗星のことを忘れているかのように、製造に熱中した。
 ドイツでは、いつの間に揃えたか、ロケット兵団をつくった。それは、百台の大ロケットで編成せられていた。このロケット兵団は、アルプス山脈地帯にかたまっている火星兵団を尻目に、空中高く飛出し、示威飛行《しいひこう》を始めた。
 ところが、その挑戦に応じて、アルプスの方角からは火星兵団の宇
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