撃するのだ。そのロケットの位置は……」
 と、怪人丸木は、訳のわからぬ符号をしゃべって、ロケットの位置を知らせ、
「すぐ、そのピート機をやっつけてしまえ!」
 火星へ飛ぶロケットを撃落《うちおと》せという命令である。もしもこのまま火星へ着かせたなら、それは丸木の手落ということになるのであった。だから、そういう人間のロケットは、すぐにやっつけてしまわねばならない。
 怪人丸木の命令一下、間もなく真暗な宇宙において、すさまじい惨劇が起った。ピート大尉のロケットが、白いガスを吐きながら、真一文字に、ぐんぐんと進んでいくところは、まことに勇ましいものがあったが、そのうち、後から、異様な形をした大きな宇宙艇が現れた。それはもちろん火星兵団の宇宙艇であった。
 火星兵団の宇宙艇は、前と後とに、大きな魚の目のような窓がまぶしく光っており、艇全体が、薄桃色の光の霧のようなものでおおわれていた。形から言っても、ピート大尉のロケットを金魚ぐらいにたとえると、火星兵団の宇宙艇は、一メートル以上もある大きな鯉のようで、とても、くらべものにならなかった。宇宙艇はどんどんロケットに追いせまり、やがて、
「あっ!」
 という間に、ピート大尉の乗ったロケットは、氷の塊が熱した鉄板の上に置かれた時のように、外がわからどろどろととけ出した。
 どろどろととけ出したロケット!
 全く不思議な光景だった。
 ピート大尉の乗ったロケットは、見る見るうちに、空間から消えてしまった。
 ロケットのあとをここまで追いかけた火星の宇宙艇は、任務を果したので、うしろへもどりながら、マルキ総兵団長のところへ電話で報告をして来た。
「ピート大尉のロケットは、完全にとけ終りたり」
 怪人丸木は、それを聞いて、
「ふん、そうか。それで一先ず片づいた。火星まで行かれてたまるものか」
 と、安心した。
 しかし、安心はまだ早かった。
 ピート大尉が火星兵団の宇宙艇にやられてしまったことが、まだ人間の世界には知れていないと見え、同じアメリカのところどころから、別のロケットが、火星の方に向いて出発した。その数は五箇であった。
 怪人丸木のところへ、この報告がとびこむと、彼はまたそのロケットの追撃を命じた。そうしてロケットは、いずれもピート大尉の時と同じく、不思議にも、どろどろとけてしまって宇宙から消えて行った。
「ほう、そうか。今度もまた片づいたか。あと、ゆだんがならないから、見かけたら、すぐ追いかけて、人間の乗っているロケットをとかしてしまえ」
 怪人丸木は、そう言って、部下にしかと言いつけた。
 こうして、ロケットは、いくつとなく、火星兵団のために怪しい最期をとげてしまった。
 地球の人々にも、ロケットの最期のことがだんだん知れて来た。そうしてついに、宇宙へとび出すことが、たいへんあぶない状態にあることがわかった。


   48[#「48」は縦中横] なさけの先生


 さて、ある朝のことであった。
 怪人丸木は、まだ宇宙艇内の寝室の中で、しずかにねむっていた。
 火星人は、一体どうしてねむるのか、たぶん、人間はそれをよく知らないであろう。
 怪人丸木は、寝室の二重戸を下すと、大きな一つの袋の中にはいる。それは、蚊帳《かや》のように四角になっていた。だが、空気は、もれないような仕掛であった。
 その袋のすそにポンプがあった。
 そのポンプを動かすと、袋の中の空気がどんどん出ていく。そうして圧力が低くなる。圧力計の指針がぐっと左に動いて、赤いしるしのついているところまで来ると、そこでポンプは、しぜんにとまるのであった。
 それまで怪人丸木は、ぼんやりと立っていたが、ポンプがとまると、彼は急に元気になる。
 彼はまず例の長いマントを、するりとぬぐ。マントの下は例の通り、太いドラム缶の胴に、西瓜《すいか》のような頭がのっており、手や足と来たら、針金の少し太いやつを組立てて作ったような、妙に細いものであった。
 彼は、手を上にのばして、まず大きな頭をすっぽりとぬぎ、下におく。
 これがすむと、胴中《どうなか》に手をかけて、こそこそやっていたかと思うと、そのドラム缶のような胴が、真中から、たてに二つにわれる。
 すると中から、赤黒い異様な生物が、大きな目をぎょろりと光らせて、はい出して来る。まるでたこのようなかっこうだ。頭の下には、胴がほとんどなくて、たくさんの根のようなと言うか、触手《しょくしゅ》のようなと言うか、へんにぐにゃぐにゃした触手が生えている。
 彼はそのぐにゃぐにゃした触手を、袋の底にいっぱいに広げる。その時頭は、もちろん敷物の上においたフットボールの球のような有様だ。そこで彼は目をあいたまま、ねむりはじめるのだった。そうして、今も彼はよく眠っているのである。
 怪人丸木は、蚊帳のよ
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