が……」
 千二は足にまかせてどんどん走った。
 わずかの心おぼえが、彼をうまくみちびいて、どうやら元の海岸が見えだしたときには、おどりあがってよろこんだ。
「ああ、よかった」
 千二はカリン岬を前にして、海岸に立ってあたりを見まわした。
「おや、博士は? 先生は? どこへいったか、まだ見えない」
 浜はがらんとしていた。
 博士のすがたも見えなければ、新田先生もいない。そればかりか、大空艇さえ見えないのであった。
「先生! 博士!」
 千二は大きなこえをだして、いくどもよんでみた。
 だが、千二のこえは、こだまとなって、かえって来るばかり。
 千二はちょっとよわった。
「どうしたらいいだろう」
 そのとき、千二のあたまに思いうかんだことがあった。このカリン岬の下に、秘密の洞窟があることを思い出したのであった。
「ひょっとすると、博士たちは、そこにいるのではなかろうか」
 そう思った千二は、なんとかしてそこへはいってみようと思い、洞窟への入口をさがしはじめた。
 カリン岬の下の洞窟へは、どこから、はいったらいいのであろうか。
 千二少年は、岩山のあたりをあっちこっちとさがしまわった。だが、その入口はなかなか見つからなかった。
「ああ困ったな。どうしたらいいだろうか」
 千二は、だんだん心ぼそくなって来た。
 だが、こんなところでよわい気を出しては、いよいよ死を早めるばかりだと思ったので、彼は胸を叩いて、なにくそと一生けんめいに自ら元気をふるいおこした。なんべんも胸を叩いているうちに、どうやら元気づきもし、気もおちついて来た。そこで彼はもう一度砂浜の方へおりていった。なにか手がかりはないかと、それを見つけるつもりで……。
 すると、彼はついに、うれしい手がかりを発見した。砂浜の上に、大きい矢印が書いてあるのであった。
「千二ヨ、タズネルモノハ、コノサキニアル。ワレワレハ、ナカデマツ」
 たずねるものはこの先にある、われわれは中で待つ――と、砂の上に片仮名で書いてあったのだ。
 たずねるものというのは、洞窟への入口のことであろう。中とは、洞窟の中のことにちがいない。われわれとは、蟻田博士と新田先生のことであろう。
「さっき、二度も三度も、このへんを歩いたんだがな。さっきは、これが見えなかった。やっぱり、あわてていたせいだろう。あわてるのは、そんだなあ」
 千二は、はずか
前へ 次へ
全318ページ中308ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング