、どうしたのであろうか。
新田先生は、ふき矢をもって火星兵とたたかうことに一生けんめいだった。
なにしろ、火星兵は、新田先生が一等つよい敵だと思ったので、これをたおせばいいと思い、先生をめがけて、さかんにせめたてたのである。
そこで先生は、千二のことを気づかっているひまがなくなった。
ふき矢をこめてはふき、こめてはふき、いきのつづくかぎり向かって来る火星兵をなぎたおした。もし、ただの一人でも近づけたら、たいへんなことになるであろう。それというのが、火星兵のもっているこんぼうみたいな武器は、先生の酸素かぶとを、上から、うちくだいてしまうだろう。火星兵は小さいくせに人間よりも、ずっと力がつよいのであった。
ひゅう、ひゅう、ぷく、ぷく、ぷく。
火星兵はますますいらだって、先生めがけておしよせて来る。
「まだ来るか。来るならいく人でもやって来い」
先生は、そう言って自分をはげましながら、どんどん前へ出ていった。少しでも、こっちがひるんだようすを見せると、火星兵はそこをつけこんで、一度に、わあっとせめて来そうである。だから先生は、あくまでつよ気を見せ、むしろこっちから、すすんでいくのがいいと思った。
それはたしかにききめがあった。火星兵どもは、とおくから奇声をあげてさわぎながら、だんだん森の中へあとずさりをはじめた。
「うむ、ここだぞ。火星兵どもが二度と出て来ないように、こっちから、おしていってやれ」
新田先生は、なおもぐんぐんと前に出ていった。そうしているうちに、しぜん千二のいるところから、へだたってしまったのである。
蟻田博士はどうしたのであろうか。
博士は、丸木と向かいあっていた。
どっちも口をきかないで、睨《にら》みあっていた。聞えるのは博士の息づかいと、そうして丸木のからだのどこからか、しゅうしゅうと響いて来る怪しいもの音だけだった。
丸木の目は、へんにとびだしている。一体丸木の顔というのがでこぼこしている。松の木の根もとを掘ると松露《しょうろ》というまるいきのこが出て来ることがあるが、それを、もう一そうでこぼこしたような感じの顔であった。目は三つあったが、正面から見ると二つしか見えないから、これは人間の顔とそっくりであった。もう一つの目は顔の後にあった。だから、後を見ようと思えば見える。
目のついているところは、河馬《かば》の目のように
前へ
次へ
全318ページ中300ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング