「大丈夫。衝突なんかしないよ。地球とモロー彗星の場合とちがうのだ」
 新田先生はそう言ったが、千二が見ていると、たしかにその通り、衝突すると見えた二つの月は、いつの間にか左右にわかれ、今度は、少しずつ離れだした。
「なるほど、衝突はしなかったですね」
 千二は、かんしんして言った。
「地球とモロー彗星も、あのように、うまく衝突しないで、すれちがえばいいのだが……」
 と、新田先生は、しみじみと言った。どうも先生の頭には、いつも地球のことが、こびりついているようであった。
 操縦室では、蟻田博士が、ロロ公爵とルル公爵に対し、熱心に話を続けている。
「……それじゃ、やっぱり、カリンの岬に大空艇を着けますかね」
 と、博士が言えば、
「それがいいですよ。カリンの岬なら、丸木なんかが攻めて来ようとしても、ちょっと手間がとれますからねえ」
 と、ロロ公爵が賛成した。
「あそこには、水底に洞窟《どうくつ》がありましたね」
 と、蟻田博士がたずねた。
「そうです。カリン下の洞窟のことですね。あそこは、かくれるのに持って来いのところです」
「洞窟と岬との間には、抜道のようなものがありましたね」
「ああ、ありますとも。五つの扉をあけないと通れませんが、階段がついていますよ」
「その扉は、どうすればあくのでしたかねえ」
「呪文を唱えればいいのです」
「その呪文は」
「ロラロラロラ、リリリルロ、ロルロルレと言えばいいのです」
「むずかしい呪文ですなあ。ロラロラロラ、リリリルロ、ロルロルレか」
 蟻田博士は、口をもぐもぐさせて、この言いにくい呪文をくりかえした。
「そこでロロ公爵、あなたは、火星へ帰られると、すぐ旗あげをせられますか」
「ええ、やりますとも。ルルが、ぜひともやると言って、意気ごんでいるのです」
 と、ロロ公爵は言って、側にひかえたルル公爵をふりかえった。
 ルル公爵は、いつも、だまっているのが好きであった。この間の病気以来、ルルは、前よりも一そう口かずが少くなった。何かしゃべるのは、いつもロロばかりであった。
 火星の王子であるこのロロ・ルルの兄弟は、蟻田博士のため危ういところを救われ、地球の上で大きくなったのであるが、こんどいよいよ火星へ帰ると、すぐさま旗あげをして、もとの王家をさかんにしたい考えだった。
「旗あげをするには、どこを本城とするのですか」
 蟻田博士は、しん
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