ら、逆に、われわれが、火星の上におりて、安全に生きているためには、やはり用意がいるわけだね」
「用意というと、やはり何か着るのですか」
「もちろん、着る必要もあろうし、第一、空気がうすいのだから、酸素のはいったタンクのようなものを、持っていく必要があるとおもうね」
「先生、ぼくは、そんなものを持っていませんが、じゃあ、火星へおりられませんね」
「持っていないのは、千二君だけじゃないよ。先生だって、持っていない」
「じゃあ、博士は持っているでしょうか」
「ああ、博士かね。そうだなあ、博士は、火星にいたことがあるというから、きっと持っているとおもうが、はっきりしたことはしらない」
「先生、こんなことは、ないでしょうか。火星へついて、博士だけが下へおりて、いってしまう。あとに、先生とぼくとは、いきがくるしくなって、死んでしまう……」
「そんなことがあっては、たまらないね」
 と、先生は、ちょっと顔をくもらせたが、
「あ、そうだ。わたしたちの前にもう一人、火星へいっている男がいるのだよ。あの男はどうしたかしらん」
「へえ、ぼくたちの前に、火星へいっている人があるのですか。だれです、その人は……」
 と、千二少年は、おどろいた。
「それはね、佐々刑事だよ。警視庁にいた元気のいい刑事さんだ」
 と、新田先生は、説明した。
「ああ、あの人ですか。山梨県の山中で、火星の宇宙艇をうばって、逃げた人でしょう」
「そうだ、あの人だ。一時は、佐々刑事の無電がはいったものだが、このごろしばらく佐々刑事から、たよりをきかない。今どうしているのだろうか。おお、そうだ。この受信機で、佐々刑事の電波をさがしてみよう」
「それがいいですね」
 と、千二も、さんせいした。
 そこで、新田先生は、受話機を頭にかけ、受信機をはたらかせてみた。そうして、この前うけた時におぼえた波長のところへ、目盛盤をまわしてみた。
「どうですか。はいりますか」
「いや、きこえないね。このへんで、たしかにきこえたはずだが、今日は、ぴいっという、うなりの音も出ない」
 新田先生は、さらに、増幅器を加えたりしたが、空間は、寝しずまったようにしずかであった。
「だめだねえ。とにかく、佐々刑事の電波は今出ていない」
 先生は、ちょっと、がっかりしたかたちであった。
 ちょうど、その時、扉がひらいて、博士がかえって来た。
「博士、異状は
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