ところへ、もどって来たのである。
「ふうん、そうだったのか。先生は、千二君が、どうしているかと思って、いつもいつも、心配していたよ」
 と、新田先生は、千二の手をとって、ためいきをついた。
「先生、ありがとうございます」
 千二も、胸が、いっぱいになった。
「おうい、新田。何をしとる。用がすんだら、さっさとこっちへこんか。何をぺちゃくちゃ、ひとりごとを言っとるのじゃ」
 博士が、隣の部屋でどなった。
 新田先生は、千二がもどってきた嬉しさで一ぱいで、博士から言いつけられたことを忘れていた。これは大変なことをした。
「はい、ただ今。――冷却管を今調べます」
「冷却管はもういいんだ。何を間がぬけたことを言っとる」
「はあ、冷却管は、もういいのですか」
「ちゃんと、なおったよ。お前が、なおしたから、なおったのじゃないか」
「ははあ、そうですか」
 先生はとんちんかんな返事をして、なおも冷却管のところを、のぞきこんでいる。
 千二が、それを見て、
「先生、冷却管がどうかしたのですか」
「うむ、冷却管に、水が通らなくなって、さわいでいたのだ。そこに見える冷却管がねえ……」
 と、先生は言ったが、その時、気がついて、笑い出した。
「あ、わかった。冷却管の上に、千二君が寝ていたんだ。だから、からだの重味で、冷却管がぺちゃんこになって水が通らなかったんだ。なあんだ、そんなことだったか」


   58[#「58」は縦中横] 遮蔽網《しゃへいもう》


 冷却管は、いつのまにか、うまくなおっていた。博士は、それで、やっとあんしんした。今や大空艇は、音たかく甲州の空をめがけてとんでいく。
「博士、冷却管の故障を見つけにいったところ、そこに、この少年がいたのです」
「なんじゃ、その少年がいたというのか。どこかで、見かけたような子供じゃが、だれだったかな」
「千二少年ですよ」
「千二少年? そうか、そうか。おもいだしたよ。天狗岩で、火星のボートを見つけたのは、この少年だったな」
「そうです」
「それから、火星人を見たのも、わしをのけると、この千二少年がはじめてじゃ。しかし、なぜ、となりにいたのかね」
 そこで先生は、千二にかわって、千二の身の上を話した。
 千二が、丸木につかまり、それから電気帽をかぶせられて、情心《なさけごころ》の先生をしているうち、電気帽のねじがゆるんで、下に落ちたため
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