、どこにいるのであろうか。
 博士は今、例のせまい研究室の中に、新田先生と一しょにいる。
 博士は、そのせまい室内にある操縦席みたいな椅子に、ふかく腰を下している。博士の前には、たくさんの計器が並んでいる。
 新田先生は、その隣の座席に、腰を下している。
 大江山隊からの電話は、博士の頭の上の高声機から、ひびいて来る。
「大丈夫だよ、大江山君。やがて火星兵団が、君の陣地を攻撃するだろう。しばらく、がんばっていてくれたまえ。あとは、こっちでいいようにやるから……」
 蟻田博士は、座席の下から、ぬっと、口のところまでのびている送話機の中に、声をふきこんだ。
「じゃあ、博士、どうかお願いします」
「よろしい。引きうけました」
 博士は、たのもしい言葉を、もらした。電話は、そこで切れた。
「博士、ほんとうに、大丈夫ですか」
「うん、自信はあるのだ。まあ、見ているがいい」
「この部屋に、いつまでも、こうしているのですか」
「そうじゃ。じゃが、間もなく、この部屋もろとも、出発じゃ」
「え?」
 先生は、ふしぎそうに、聞きかえした。
(この部屋もろとも、出発じゃ!)
 博士のいったことは、新田先生には、わけがわからなかった。そこで、えっと、ききかえしたわけであった。
「新田、この部屋が、かわった作りかたをしてあるのが、お前にはわからないか」
「えっ、かわった作りかたといいますと……」
「なぜ、こんなにせまいのだろうかと、考えなかったかね。また、なぜ、こんなにトンネルのように、奥行ばかりふかいのだろうかと、うたがわなかったかね」
 博士は、そういって、新田先生のけげんなかおを、たのしそうに眺めた。
「博士、わかりませんなあ」
「わからんか。よほど、お前は血のめぐりが悪い。じゃあ。これを見よ」
 博士は、そういって、前の計器盤の下についている押ボタンの一つを、指さきで押した。
 すると、にわかに、大きなエンジンが、まわりだしたような音がした。そうして部屋全体が、こまかくふるえているのだった。
 新田先生は、耳をすました。そうして、ふしぎそうに、あたりを見まわした。
 博士は、第二のボタンを押した。エンジンらしいものの廻転が、また一段と、早くなったようである。
「まだ、わからんか。――新田、お前の坐っているところの正面に、やがて窓があくから、よく気をつけていろ」
「はあ、窓ですか」
 
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