ない出来事にあって、その場に茫然と立っていた。気をのまれたかたちである。
弾丸が腹に命中したその火星人は、
(おや、へんだぞ!)
というような身ぶりをして、黄いろいけむりがたちのぼる自分の腹を、触手でしきりに撫でまわしていた。この火星人こそ、大江山課長をやっつけた火星人だったのだ。
そのうちに、ひどく大きな音で、
しゅうっ!
と、へんな音がした。
とたんに、その火星人の体は、ふらふらと前後にゆれたかと思うと、積重ねてあった樽をたおすように、どすんと横たおしに、たおれてしまった。
それを見て、他の火星人はまたびっくりしなおしたらしかった。彼らは、たおれた火星人のそばへ駈けよった。
すると彼らは、そこで不思議な有様を見た。それはたおれた火星人の大きを腹の上から、黒いけむりがもやもやと盛に立ちのぼりつつ広がっていくと見ているうちに、あの丈夫なドラム缶のような胴が、どんどん湯気のように蒸発していって、やがてその下から、みにくい火星人の体が、小さくちぢこまって、あらわれたのであった。
胴が蒸発して、なくなってしまったのである。さあたいへんである。どうしてこうなったのか、訳がわからないが、火星人たちは、びっくりしてそこをとびのいた。
「撃て! 今だ!」
博士の声だ。ごうん、ごうんと、博士と先生とは、残る火星人めがけてガスピストルを撃出した。
十号ガスのききめはものすごかった。
蟻田博士と新田先生とは、のこりの火星人めがけて、ガスピストルを、どんどんぶっぱなした。
ごうん、ごうん、ごうん。
ぱかっ、ぱかっ。
弾丸は、おもしろいほど火星人の胴中《どうなか》にあたる。そうして黄いろいけむりがむくむくと出て来る。
火星人はそのけむりにおどろく。
ひゅう、ひゅう、ひゅう。
ぷく、ぷく、ぷく。
妙な声を出して、火星人たちがさわいでいるうちに、あっちでもこっちでも、しゅうっ、しゅうっと音がして、火星人のかぶっている固い胴が、湯気のようにとけてしまうのであった。
どたり、どたりと火星人たちは、黄いろいけむりに包まれ、大地の上にころがる。
けむりが少し消えて来ると、その下に、火星人は、たこのひもののように、赤黒い体を小さくちぢめて、固くなっているのであった。
火星人のかぶっていたあの固い胴は、地球の空気の圧力に対して、よわい体を持った火星人が、その圧力
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