そうだなあ、ちと静かすぎるのう」
 博士と先生とは、そんなことを言いながら芝公園の横をぬけ、電灯がぽつんとついている赤羽橋の方へ足を向けたのであった。
 その時、とつぜん、奇妙な声を二人は聞いた。声の方角は芝の山内だ。
 何を叫んでいるのかわからないが、たしかに何か重大なことが起ったらしく、金切声をあげている。それは一人や二人ではなく、かなりの人数だった。しかし人間の声かどうか、それがはっきりしないほど怪しいひびきを持っていた。
「おお、あの騒ぎは、たしかに火星兵団の者と人間とが、衝突したんだ。さあ、いって見よう」
 博士は、先生をうながして、赤羽橋を目の前に左へ曲り、芝公園の深い森の中へはいっていった。博士は、老人とも見えない元気であった。
 森の中をしばらく走っていくと、果して森の中の幅の広い自動車路の上で、入乱れて盛に格闘している一団のあるのを見つけた。
「あそこだ。おい、新田、そっとあそこへ近づくのだ。ガスピストルは、わしがうつまではお前もうってはならないぞ」
「はい、承知しました」
 二人がそっと近づくと、格闘している一団というのは、一人の火星人と、こっちの警官隊とであった。火星人を真中にして、警官隊はそのまわりを取巻いている。
 形においては、火星人を、警官隊が取巻いているのであったけれど、火星人の勢いはものすごく、警官隊は、むしろじりじりと押されていた。
「……この上は皆で、こいつにとびつくのだ。失敗したら、次は体あたりだ。とびついたら放すな」
 と、先頭に立ってさけんでいる声に、新田先生は聞きおぼえがあった。
「おい、いいか。突撃用意! 一、二、三! 突込め!」
 号令一下、わあっと、警官隊は剣や棒をふりかざして、火星人をめがけてうちこんでいった。
 ぷくぷく、ぷくぷく。
 火星人は妙なうなり声をあげて、一歩うしろへさがる。そこへ警官隊は、どっと、とびこんでいったのだ。
 それがはじまりで、あとは、ものすごい格闘がはじまった。あっと言う間に、警官の一人は、空中たかくほうり上げられた。他の一人は立木に、いやと言うほどたたきつけられた。勇敢にも火星人にとびついていった警官たちは、ことごとく火星人のために、あべこべにやっつけられてしまった。全く、おどろくべき火星人の大力であった。
 火星人の大力! それは警官隊もよく知っていたのだ。しかし警官隊は、市民たち
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