んなことがあったら、我々は人間から、さらに強い手向かいを受けることになって、困るのじゃ」
「大丈夫です。そんなえらい人間はいませんよ」
「そうではない。むかし、この火星へアリタ博士というのがやって来たが、彼などは、なかなかすぐれた頭を持っていた。ああいう連中に見せたら、後がよくない」
「ですがペペ王、モロー彗星は、あと十日ぐらいして地球を粉々にこわしてしまうのですよ。ですから、たとえ宇宙艇を人間に見せたところで、あと十日では、そのうちの一台だって作り上げられませんよ。心配は御無用です」
 丸木は、落着き払って言った。
「ふん、まあ、せいぜい気をつけてくれ」
 と、ペペ王はようやく折れた。
「で、その占領された宇宙艇は、この後どうなさるのですか」
 と、今度は丸木がたずねた。
「うん、仕方がない。中にいる火星人には気の毒だが、宇宙艇ごと、粘液で、とかしてしまうつもりだ」
 と、ペペ王は放言した。


   50[#「50」は縦中横] 連合脱出隊


 中天にかかる恐怖の星モロー彗星は、日ごとに大きくなり、光力を強めていった。
 もうそのころには、夜間だけではなく白昼でさえも、モロー彗星が空に浮かんで見えるのだった。
 夜になると、モロー彗星は、にわかにらんらんと輝き出すのであった。その大きさは、もう月の半分ぐらいになった。月が空に二つ、かかっているようにも見える。全く怪しくも不思議な光景であった。地球の人々は、モロー彗星の光が強くなればなるほど、興奮の度をたかめた。
 半分おかしくなっている者や、道ばたで一日中泣きどおしの者が、だんだんふえて来た。そうかと思うと、盛にステッキや剣を空に向けてうちふり、
「モロー彗星なんか何者じゃ」
 と、見えすいた強がりを言っている者もあった。
 その一方において、科学者や技術者たちは、その大半が工場につめて、わきめもふらずに、地球脱出用のロケットを製造することに、一生けんめいであった。彼らは、時にモロー彗星のことを忘れているかのように、製造に熱中した。
 ドイツでは、いつの間に揃えたか、ロケット兵団をつくった。それは、百台の大ロケットで編成せられていた。このロケット兵団は、アルプス山脈地帯にかたまっている火星兵団を尻目に、空中高く飛出し、示威飛行《しいひこう》を始めた。
 ところが、その挑戦に応じて、アルプスの方角からは火星兵団の宇
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