うなものに、わけがあったのである。
 いや、彼は好きで、あのかぶとのようなものを、かぶっているのではなかった。怪人丸木が、あれを少年の頭にかぶせたのであった。
 あれは電気帽という。
 電気帽には、ふさのようなものが下っているが、あれはアンテナのようなもので、外から電波をかけると、その電波はアンテナに感ずる。丸木は、千二を逃さないために、千二にその電気帽をかぶせ、そうして、また宇宙艇の中にある電波機械から、ある不思議な電波を出している。その電波が電気帽に感じると、千二は逃げる気持がなくなってしまう。つまり、電気帽は千二の脳髄の働きを一部とめてしまうのだ。
 脳髄の働きは一種の電気作用だから、こんなことが出来るのであった。
 つまり、千二には、逃げたいという気が起らないように、し向けてあるのだった。千二の体には、鎖こそつないでなかったが、彼こそ電波でしばられた囚人《しゅうじん》であったのである。
 千二は、怪人丸木のもとから逃出す気は少しもなかった。それは丸木が、千二の頭にかぶせた電気帽の働きであった。千二の心には、まったくそういう気が起らないように仕掛けられてあったのだ。
 火星人という奴は、どこまで、ざんこくなことをするか、底が知れなかった。
 千二は電波囚人だから、今度は新田先生がいくらさがしても、待っていても、先生のもとへ戻って来ないのであった。千二は、いつまでこうして、電波囚人になって、こころの自由をしばられているのであろうか。
「ああ火星から無電がはいったようです。おお、ペペ王からの電話です」
 と、千二は急に壁のところへ、かけ出して行った。
「何だ、はやペペ王から電話か。はてな、いつもの通信時間とは違うようであるが……」
 と、丸木はふしん顔。
「そうです。特別通信です。何かペペ王の方で、急がれることがあるのでしょう」
 こういう話になると、千二の頭はあたり前に働いた。千二が今かぶっている電気帽は、ただ『ここを逃出す』という気だけを、ぜったいに千二に起させないように、機械を合わせてあったのである。
 千二は、壁のところに出ている小さなボタンを押した。
 すると、壁の上に、ぽこんと四角な窓があいた。窓ではない、一種のテレビジョンの幕だ。無電をかけて来た火星の景色が、うつっているのであった。
「おい、マルキよ」
 画面一ぱいに、いきなり、例のトマトに目をつけ
前へ 次へ
全318ページ中212ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング