にいる新田先生とが交す宇宙電話は、なおも続いた。
「もしもし新田先生、聞いているかね」
「聞いていますよ、佐々さん。――で、どうなんですか、火星人の考えは? 我々地球の人間をどうするつもりなんでしょうか」
「それは、さっきもちょっと言ったが、地球の人間をひっぱって来て、飼って利用しようと思っているんだ。ちょうど、人間が豚や鶏を飼っているように、火星人は、人間を飼って、自分たちの勝手なことに使おうとしているのだ。そうなれば、地球人類の降服だ。火星人の奴隷になることだ。いや、奴隷以上のはずかしめを受けることになるだろう。だから、火星兵団に対しては、一歩もゆずってはいけない。彼等が、人間をすくってくれると思っていては大まちがいだ」
佐々刑事の言葉は烈しい。
「でも、困ったですなあ。モロー彗星には衝突されるし、火星人にすくわれれば奴隷になるし、それじゃ地球の人間は助からない」
と、新田先生は、ほんとうに困ってしまった。
「だから、だんぜん、火星兵団と戦うんだ」
「戦っても、どっちみち人間は助からないではないですか」
「助かるか助からないか、とにかくやってみなければわからない。戦ってたおれれば、もともとだ。もうだめだからと言って、負けるつもりになっていることがいけないんだ。せめて日本人は、建国精神によって、はなばなしく戦ってもらいたいなあ。火星兵団に降参してしまったなどという、ふがいない歴史なんか、残してもらいたくない」
佐々刑事は、火星の上に、ただひとりがんばって、はるかに地球の人々を励ましたのであった。
46[#「46」は縦中横] 彗星対策《すいせいたいさく》
三月の十何日ごろから、肉眼でもモロー彗星が見えるようになった。
モロー彗星の位置は、南東の地平線に近い空であった。太陽が西に沈んで、あたりがほのかに暗くなると、うっすり[#「うっすり」はママ]と青白い光の尾をひいたこの妖星は、急にかがやき始める。
日が暮れかかると、誰も彼も言い合わせたように南東の空に首を向けた。家々の窓には家族中の顔がならび、道行く人は立ちどまり、あっちに一かたまり、こっちに一かたまりと、不安な面をそろえる。
モロー彗星は、そういう地球の上の騒ぎを知ってか知らないでか、絵にかいたようにしずかに、低い空にかかっているのであった。無言の威圧だ。
「あれが、モロー彗星ですか」
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