の映写幕である。本艇外の様子が、前後上下左右の六方面においてテレビジョン装置によって映写幕へうつしだされているわけだ。
 しかも映像は、肉眼で見るよりずっと明るく物の識別ができた。これはこのテレビジョン装置が、赤外線に対し非常に敏感にできるためである。つまり夜もよく見える猫の目のようなテレビジョン装置である。老博士は、絶えずこの六つの映写幕の上に深い注意を払っていた。
「博士、見えますか、宇宙塵は……」
 マートン青年が、博士へ声をかけた。この青年は今日は特別に舵輪を操っている。舵輪台は博士の後方の一段高いところにあり、鉄管で編んだ球の中に、彼と舵輪とが入っていて、さらにその鉄管球は二つの大きな鉄の輪で支えられている。これは艇がどんな方向に傾いても、操舵者と舵輪はじっと空中に停止していて、すこしの変位もしないようにこしらえてあるわけだ。
「うむ、宇宙塵の渦巻は黒い帯のように見えるが、個々の宇宙塵はまだうつっていないよ」
 博士は、そう応えて、さらに映写幕に顔を寄せた。
「まだ宇宙塵の入口だから、あまり衝突する塵塊《じんかい》もないのでしょうね」
「そうだろう、しばらくは、宇宙塵の流れに
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