難きたる


 もう村も見えなくなり、教会の尖塔《せんとう》も山のかげにかくれてしまった。そして山木と河合の乗っている奇妙な自動車は、黄い[#「黄い」はママ]路面を北へ北へととって、順調に走っているのだった。
 二人の気持も、ようやく落着いてきた。
「ねえ、山木」と、ハンドルを握っている河合がいった。
「なんだ河合」
「さっき仲間がみんな送ってくれたけれど、あの中に張《チャン》とネッドの姿が見えなかったように思うんだ、そうじゃなかったかい」
「張とネッド、そういえば見かけなかったようだね」
「おかしいじゃないか、あんなに仲よしの張もネッドも送って来ないなんて」
「うん、きっと二人とも怒ってしまったんだよ、僕たちはあんなにきついことをいって、二人のいうことをきいてやらなかったからねえ」
「そうかなあ、怒ったんだろうかねえ」
 河合は首をひねった。
 二人はしばらく沈黙していたが、そのうち今度は山木が河合を呼んだ。
「ねえ河合、張の占いはほんとうにあたるんだろうか」
「さあ、それはどうかなあ。あたったりあたらなかったりさ」
「君はおぼえているだろう、ネッドがいっていたね。張の水晶の珠を拝《
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