住んでいると思うかい」
「人間かどうかしらんが、生物はいると思うね、張君」
「生物? その生物は、僕たちを見たとき、どうしようと思うだろうね」
「どうしようというと、どんなこと?」
「つまり火星のライオンかゴリラかが、僕たちの顔を見たとき、これは珍らしい御馳走が来たぞ、早速たべちまおうかな、などということになりやしないかね」
「さあ、それはわからないね、マートンさんに聞いてみなければ……」
「マートンさんも、よくわからないと答えたよ、それについて僕は考えたんだ。火星へ上陸するときは、御馳走の固まりをたくさんこしらえて持って行くことだと思うよ」
「御馳走の固まり」
「そうなんだ。この御馳走の固まりは、僕たちがたべるんじゃなく、いざというときに、火星の生物の前へ放りだすんだ。するとその生物がむしゃむしゃたべ始めるだろう。その隙に僕は逃げてしまうんだ」
「ほおん、するとその御馳走の固まりは、つまり僕たちの身代りなんだね」
「僕たちじゃないよ、今のところ僕だけの身代りにこしらえる計画さ」
「そんなことをいわないで、僕の分もつくってくれよ」
「よし、そんなら君の分もこしらえてやるが、一体その火星
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