ういうわけだろうね、コーヒーは博士ばかりを追駆けまわしたんだ」
「それはそのはずだよ。博士が逃げると、そのうしろに真空ができるんだ。真空ができるということは、そこへコーヒーを吸いよせることになるんだ。ちょうど低気圧の中心へ向って雨雲が寄ってくるようなものだよ」
河合は、そういって説明をした。
「そうかねえ。しかし、張君はえらいね。だって今にデニー博士がコーヒーに追駆けられるだろうということをちゃんと予言しているんだからね」
と山木は、傍でさっきから、にやりにやりと笑っている張少年の方へ振向いた。
「ふふふふ。おそろしいよ、僕は……。僕の予言があたるんなんて、全くおそろしいことだ」
張は、得意と恐怖とをつきまぜて、口をゆがめて笑うのだった。
「デニー博士の将来について張君は三つの予言をしたね。その一つがあたったんだから、残りの二つもきっとあたるに違いない」
ネッドは、目をくるくるさせて、そういった。占いの話になると、彼は誰よりも一番熱心になる。
「何だったけな、あとの二つの予言は……」
山木が首をかしげる。
「第二は世界のどこにも、一つの寝床一つの墓場ももたなくなるだろうという
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