手前、今更がたがたのおんぼろ自動車のことをぶちまけるわけにもいかなかった。
愉快なる出発式
はなばなしい自動車旅行の出発を明日にひかえて、山木と河合とは泣き出さんばかりの有様だった。それというのは、自動車の修理が一向にはかどらなかったからだ。いや、はかどらないどころか、修理の手をつければつけるほど、あっちもこっちも悪くなって、一個所を直すたびに、更に他の何個所かががたがたしてくるのであった。これでは自動車を直しているのか、壊しているのか分らなかった。
「困ったねえ。これじゃあ明日の出発に間にあいそうもないぜ」
山木はとうとう悲観して、スパナーを放りだした。
「でも、明日はどうしても出発しないと、日程がくるってしまうよ。それにあのとおり友だちも大さわぎしているんだから、僕たちの出発がおくれると、またひどい悪口をあびなければならないよ」
「それは分っているけれど、この有様じゃあねえ。こんな車を買わないで、もっといい車を見つけりゃよかった」
「仕方がないよ、さあ、元気を出して、どうしても修理をやっちまおう、今夜は徹夜でやらなくちゃね」
「うん」
河合にはげまされて、山木は
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