して、答をにぎって帰るんだぜ。そしてあのとおり缶詰や野菜をうんと持込んでくれるところを見ると、皆ちゃんとあたっているんだぜ。だからよ、こっちのいうことは口から出まかせでもお客さんは何か思いあたるんだ。そしてその言葉によって迷いをはらし喜んで一つの方向へ進んで行くのだ。だから結構なことじゃないか。儲けても悪くないんだ」
 張仙人は、彼一流の考えをぶちまけた。これには山木も、すぐには返す言葉がなかった。
「じゃあ張君。さっき君に占ってもらった火星探険協会長のデニー博士ね、あのときの占いは、あれは本物なのかい、それとも口から出まかせなのかい」
 そういって聞いたのは、今まで黙って熱いコーヒーを啜《すす》っていた河合だった。
「はははは、あれかい。あの髭むくじゃらの先生のことだろう。あれは、君が出発前に僕がネッドを使っていわせた占いと同じようなもので水晶の珠を使わなくても分るんだ」
 張は、くすくすと笑いつづける。
「ふうん“二日後に僕たちが厄介を背負いこむだろう”などというあれだね。あれはひどいよ」
 河合は、張をにらんだ。が、あのときのことを思い出して、おかしくなって吹き出した。
「ははは
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