、そんなことが出来るのかい。だって、水晶の珠をにらんで、どうして占いの答えを出すのか、僕たちに出来やしないじゃないか」
 山木が、言葉を投げた。
「なあに、あの占いのことなら、そんなに心配することはないよ。誰にでも出来ることだよ。つまり、水晶の珠をじっと見詰《みつ》めていると、急になんだか、喋《しゃべ》りたくなるからね。そのときはべらべら喋ればいいんだよ」
 張は、すました顔である。
「だって、それがむずかしいよ。僕らが水晶の珠を見詰めても、君のようにうまく霊感がわいて来やしないよ」
「それは僕だって、いつも霊感がわくわけじゃないよ」
「じゃあ、そのときはどうするんだい。黙っていてはお客さんが怒り出すぜ」
「そのときは、何でもいいから出まかせに喋ればいいんだ。するとお客さんは、それを自分の都合のいいように解釈して、ありがたがって帰って行くんだ。占いの答に怒りだすお客さんなんか一人もいないや」
 張は自信にみちた口ぶりである。
「呆れたもんだ。それじゃインチキ占いじゃないか」
 と、山木は抗議した。
「違うよ。こっちは口から出まかせをいうが、お客さんの方は自分の口から都合のよいように解釈
前へ 次へ
全163ページ中38ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング