話し合ったが、よく分らない。その翌日午前から午後へかけて、ネッドは張と共に走る箱車の中に入ったきりで外へは殆んど出ずに、何か夢中で仕事をしているらしかった。
やがて約束の午後四時となった。
ネッドは、箱の中から運転台のうしろの羽目板を叩いて、自動車を停めよと信号した。
車は停った。
ネッドは箱から出て来た。
「ちょっとした工事をするから、手伝ってくれよ」
どこへ工事をするのかと思っていたら、ネッドは車の側に箱を置き、その上にのぼると牛の画の腹の下にハンドボールで穴を円周状《えんしゅうじょう》にあけた。そのあとで金槌《かなづち》で真中を叩いたから、ぽっかりと窓があいた。
「何をするんだ、ネッド」
河合はおどろいて、尋ねた。
「さあ、こんどは僕の腰掛けを高いところにこしらえるんだ」
ネッドは山木と河合を手伝わせて、箱の後部の上に、猿の腰掛のようなものを横に取付けた。そしてその上へ掛けてみて、
「さあ、いらっしゃい、いらっしゃい」
と叫んだ。
「何だ、見世物か。ははあ、この穴から中をのぞくんだな」
山木はその穴に目を当ててのぞいたが、ぶるっとふるえて身体を後へ引いた。
「う
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