とであろう。
その日の午後四時ごろのこと、二人の乗った自動車が川に沿った田舎道を走らせていると、うしろから警笛をやかましく鳴らしながら次第にこっちへ追付いている自動車があった。
あまりうるさく警笛《けいてき》を鳴らすものだから、山木は自分たちの自動車を道路の端の方へ寄せ、相手の車を先へ追越させることにした。そのとき後方が見られりゃよかったのであるが何しろ大きな箱車のことであり、凸面鏡もついてないし、運転台からは後が見えなかった。
ところがそれから間もなく、かの相手の車は山木たちの箱車をえらい勢いで追いぬいた。見るとそれは小さい二人乗の競争自動車だった。が、へんに方々が裂けていたり凹《へこ》んでいたり、ペンキもはげちょろの有様で山木たちの車以上にひどいものだった。
「あ、あれに乗っているのはネッドだ、あっ、張もいらあ」
「え、ネッドに張か、ははあ、とうとう無理をして、後から追駆《おいか》けてきたんだよ、仕様がないやつだ」
二人はおどろくやら、ちょっとうれしくなるやらであった。そして大きな声をあげて、後から張とネッドの名を呼んだ。
張とネッドは、それが聞えないのか、脇目もふらず自
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