か……」とマートンは首をかしげたが「とにかく今のところはこうして火星へ飛び続けているよ、本艇の損害は案外軽いのかもしれない。デニー博士がいま調べていられるのだ」
 おおデニー博士。博士は無事なんだ、そしてもう元気に、重大な仕事に当っておられるのか。自分もぼやぼやしてはいけないと、河合少年はわが身を励《はげ》ました。


   老博士の教訓


 河合少年は、仲間の安否を確めるために操縦室を出た。
 どこもここも、たいへん壊れていた。艇の外壁などは、大きくもぎとられて廊下がむきだしになっていることがあった。
「あああぶない。そっちへ出てはいかん」
 河合少年が廊下をのぞいていると、うしろから彼の腕をとって引戻した者がある。少年はおどろいて振返った。立っていたのはデニー博士だった。
「そこへ身体を出すと、吹飛ばされて墜落するからね。出ちゃいかん」
 老博士は重ねて河合に注意をした。彼はうれしく思って、あつく礼をいった。博士は、軽く肯《うなず》いた。それから、
「そうだ。君たち少年は四人だったな」
「ええ、そうです」
「そうか。君たち少年が本艇に乗ってくれたので、今わしはたいへん気が強い。こ
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