しれない」
「ええ、働きますとも。しかし僕は何をすればいいのでしょう」
「それはデニー先生が命令される。さあ、いっしょに配電盤の前へ行こう」
 マートン技師に連れられて、河合少年は配電盤の前に集まる技術者の一団に加わった。機械の好きな河合少年は、心臓をどきどきさせて、デニー博士の命令を待った。


   重力は減る


 変になったエンジンの調子を正常にとりもどすことは、絶望かとも思われた。すでに地上から飛びだしてから十四時間を経過したが、あいかわらずエンジンは勝手に働き続けている。
 それでもデニー博士は、次々にエンジンに手を加えている。機械の間から青い火花が散ったり、絶縁物がぼうぼうと燃えだしたり、とうぜん[#「とうぜん」はママ]油がふきだしたり、にぎやかなことであった。河合少年はマートン技師と組んでそういうときに勇敢に機械の中にとびこみ、応急処置を行った。
 誰も余計な口をきく者はいなかった。十四時間ぶっ通しに、すこしの乱れもなくエンジンと闘っている技術者だった。
 このときデニー博士が、くるっと背中を廻して、一同の方へ向いた。何か新しくいうことがあるらしい。
「諸君。これから後は、二交代制にする。というのは、エンジンは変になっているけれど、これ以上悪化することはないと思われる。だから当分、変になったエンジンの番をしていればいいのだと思う。どうせ第一倉庫の原料を使いつくせば、エンジンは自然に停止するに決まっているんだ。そうなるのは今から約四日後のことだ。そうと分れば全員で張番をしているにもあたらない。A組とB組と二つこしらえて交代制でやろう」
 河合少年はマートン技師と共にB組に入った。デニー博士もB組だった。B組は今から三時間休養をとることになり、A組の方はエンジンに対し厳重な張番と応急処置を続けることになった。
「河合君。くたびれたろう。おなかもすいたろう。さあ食堂へ行って、うんと食べてきたまえ」
 と、マートン技師は河合少年に、食堂へ行くことをすすめた。
「はい、ありがとう。マートンさんは食堂へ行かないのですか」
「後から僕も行くよ。その前にデニー博士とすこし相談しておくことがあるのでね、君は遠慮せずに先へ行ってきたまえ」
 そういわれたので河合少年は、一足先へ食堂へ行った。
「お、河合君。その姿は、どうしたんだ」
 ネッドが河合をいち早く見つけて、そば
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