る来ました」
山木がしゃべっている間、張もネッドも、山木と同じようなかたちをして、あいさつをした。
すると、とつぜん火星人の中から奇妙な声があがった。
「ようこそ来てくれましたね。地球の諸君。お目にかかって、たいへんにうれしいです」
たいへん流暢《りゅうちょう》なアメリカ語であった。
「おお、ありがとう、ありがとう」
山木はびっくりとうれしさとで、両手を前へのばして感謝の意をあらわした。だが半信半疑であった。どうして火星人は地球のことばを知り、そしてそれを話すことができるのであろうかと。
そのとき、火星人の群が、三少年の前で左右に割れた。と、奥からも七人の火星人が、こっちへ進んで来た。見るとその火星人たちは大きな頭の下、つまり首に相当するところに太いマフラーのようなものを巻いていた。一番先頭の者は、白いマフラーを巻き、その他は緑、黄、紫などのものを巻いていた。どうやらこの白いマフラーの火星人が、えらい人物のように見受けられた。
「おもしろい音楽、おもしろい踊り。それをわれわれの目の前で聞かせたり見せたりして下すって、たいへん愉快でした。みんなよろこんでいますよ」
と、白いマフラーの火星人はいいながら、山木たちの前まで来て立ち停り、鞭《むち》のような手の一本を前にさしだした。
それは握手をもとめているらしく思われたので山木はちょっと気味がわるかったが、思い切って自分の手をさしのばすと、ぐっと相手の手をつかんでふった。その手ざわりは、かなり冷めたかったが、それでも体温のあることが分った。
「地球のことばを話して下さるので、たいへんよく分ります。そしてうれしいです。ぼくは山木という者です。どうぞよろしく」
「やあ、よくそういって下すって、私もうれしいです。私はギネといって、このミカサ集団の代表者をつとめている者、どうぞよろしく」
白いマフラーを首に巻いた火星人ギネは、そういって、ていねいにあいさつをした。
山木はいよいようれしくなって、張とネッドを紹介すれば、ギネも、そのうしろにひかえた六人の職能代表者を紹介した。
一同の間には、親しい気分が流れた。
「ああ、ギネさんとおっしゃいましたね」
山木が呼んだ。
「はい、私はギネです」
白いマフラーのミカサ代表者はこたえた。
「ええ、その……つまり、さきほどはたいへん失礼しました。気持のわるい瓦斯《ガス》
前へ
次へ
全82ページ中72ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング