ろ違った物質となっているものだという見地《けんち》から、この名案が考え出されたのです。
しかし科学は矢張り臍まがりで、この方法はまだ実用に遠く、金には成るには成るが、顕微鏡で探さねばならぬ程ですから、費用仆《ひようだお》れで金にはならない。……だが油断は出来ませんぞ。最近になって人造《じんぞう》宇宙線の研究が俄《にわ》かに盛んになりましたが、この研究が進むといよいよこの人造宇宙線を使って、水銀を金に化《か》することが他愛《たわい》もなく出来るようになりそうな気がします。勿論そうなったからといって悦《よろこ》ぶのは早い。金が簡単に出来るようになったら、今日一|匁《もんめ》十何円|也《なり》という金が、一匁一銭也位になるでしょうから、いくら金がドンドン手に入っても仕方がないでしょう。まあそのときは、鼻紙に金でもって頭文字《イニシャル》でも入れることですネ。
宇宙線の人造ということも面白い問題ですが、その宇宙線と並んで現代で人気のあるのは超短波《ちょうたんぱ》でしょう。
超短波というと電波の一種で、波長がたいへん短い。一メートルから十メートル位の間のものです。ラジオ放送に使っているのは二百から五百メートルですから、いかに短いかということが判りましょう。
この超短波についても、いろいろと面白い失敗が繰りかえされました。超短波を使って近くで通信をすると、びっくりするくらい大変よく聴える。しかるに何百キロ何千キロという遠方《えんぽう》になると、どんなに電力を増《ま》しても聴えない。これは可笑《おか》しいというのでいろいろ調べてみました。
電波というものは、地表の一点から発射されると、どんな道を通って前進するか? お月様が傘《かさ》を被《かぶ》ったときに外に輪が見えますが、あれに似た恰好《かっこう》に、地球の外には、地球を包んで電気|天井《てんじょう》というのがあります。電気天井の高さは、地表から百キロぐらいです。電波はこの電気天井と地表との間に明いている空間を走るのです。走るといっても、波長が長いラジオのような電波なら、足を地表につけたままで前進するし、短波のように短い電波になると、地上から探照灯《たんしょうとう》を出したような恰好に空に向けて前進し、電気天井にあたってまた下へ下りて来ます。例えば青森で出すと上へ上って門司《もじ》の上空で電気天井にぶっつかり今度は反射
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