かったら、その人をよびとめて、相談してみよう)
 いくら焼けあとでも、ここは銀座通りだから、そのうちにきっと誰か通るにちがいない。銀座はどんなになったと、心配してみにくる人が、きっとあることだろう。その人をよびとめればいいんだ。
 源一はあたりを見渡した。まだ朝の七時であったが、人影はさらに見えない。みんな銀座を忘れてしまったのかなあ。
 水筒《すいとう》の水をすこしのんでから、源一は腰をかがめて、焼けあとの一坪を整理にかかった。石ころと灰と分け、そして元の固い地面を出すつもりだった。そんなことをしているうちに、誰かそこの通りを通りかかるだろう。
 源一は、一生けんめい仕事をつづけた。それは骨の折れる仕事だった。しかしおもしろくもあった。焼けあとからは石ころと灰だけではなく、針金やせとものや、いろんなものが出てくる。
「おうい、坊や」
 源一はとつぜん誰かによびかけられた。


   さしこの老人


 あべこべに、源一の方が誰かによびかけられた。源一はびっくりして顔をあげた。すると源一をよんだ相手は、銀座の本通りに立って、こっちを見ているのだった。さしこ[#「さしこ」に傍点]のはっぴ
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