仕事だい、お前さんのもくろんでいるのは……」
「じつは、この一坪館を建てなおして、もっと上へのばしたいのですがね。つまり十階か二十階ぐらい高いものにしたいのです。そして各階に、いろいろ楽しい店を開くのです。どうです、おもしろいでしょう」
「でも大丈夫かね、そんなにひよろ高い煙突《えんとつ》みたいな建物がつくれるかしらん」
「きっと出来ますよ、大丈夫です。二十階の一坪館ができてごらんなさい。銀座の新名物になりますよ。どうです、おかみさん。これをいっしょにやりませんか」
「おもしろそうだけれどね、台風《たいふう》が来たら吹きとびやしないかね。あたしゃ心配だよ」
「たぶん大丈夫です。このことはいずれ、よくしらべておきます」
 源一は、ヘーイ少佐が日本へかえって来たら相談しようと思った。少佐は建築工学に明るいのだったから。
「しかし、なにしろたった一坪だから、二十階つくってみたところが、いくらの広さでもありやしないやね」
 矢口家さんのおかみさんの心は、だんだん源一の話の方へうごいてくる様子だ。


   りっぱな土産《みやげ》


 一坪館を十階または二十階にするという考えは、源一が矢口家の
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