一坪館
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)焼跡《やけあと》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)五十|銭《せん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)さしこ[#「さしこ」に傍点]のはっぴに、
−−
銀座の焼跡《やけあと》
すばらしき一坪館《ひとつぼかん》!
一坪館て何だろうか。
何がそんなにすばらしいのか。
早くそれを御話ししたいのであるが、待って下さいよ、よく考えて見るとやっぱり一坪館のお誕生のところから、このものがたりを始めた方がいいようだ。
さて、その始まりの話であるが、ここは銀座である。ただし、あのにぎやかな銀座の姿はどこにもみられない。みわたすかぎり焼野原《やけのはら》である。
灰と瓦と、まだぷすぷすとくすぶっている焼け棒くいの銀座である。あまりにもかわりはてた無残《むざん》な銀座。じつは、昨夜この銀座は焼夷弾《しょういだん》の雨をうけて、たちまち紅蓮《ぐれん》の焔《ほのお》でひとなめになめられてしまって、この有様であった。
人通りは、さっぱりない。みんな遠くへ逃げさっ
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