ている数字を導きださねば求める謎の数字は結局出てこない仕掛けになっている。
「これは六ヶ敷いことになった」
 と思ったが、早く考え出さなければ間にあわない。ピンチは迫っているのだ。
「よおし、考えるだけは考えておこう」
 帆村は、うつしとってきたノートを熱心に見つめた。しばらく見ているうちに、彼は一つのヒントをつかんだ。
「なるほど、やっぱり考えてみるものだなあ。すこしずつ解けるじゃないか」
 かれはどういう風に考えたか。
 74□に8をかけて、その答が□□□2 となるのである。こういう風に8をかけて一の位に2が出てくる場合は、そう沢山あるわけではない。――彼はノートへ、上のような符号をつけた。
[#ここから罫囲み]
[第二図]
※[#丸2、1−13−2]

       8←ハ
   _______
74A)BCDEFG
↑↑  HIJ2
イロ     ↑
       ニ

[#ここで罫囲み終わり]
 ABCなどの英字は、まだいくつとも分っていない数字である。イロハなどは、もう7とか4とか確定している数字である。
 だからいまはAの問題なのである。さていろいろやってみると、Aは二つの答をとることが分った。すなわち A=4 と A=9 の二つの場合である。
 A=4 なら、744×8 となって、答は 5952 となる。また A=9 なら 749×8 となって答えは 5992 となる。どっちも一の位は2である。これが第一の発見である。
 それに元気づいて、なおも考えをつづけてみると、果然不可解の数字のうち二つまでが確定することが分ったので、帆村は躍りだしたいほどの悦びを感じた。
 それはいずれの桝形《ますがた》の中の数字であろうか。
 結論を先にいうと、H=5、I=9 と決定するのである。なぜならば右にのべた A=4 の場合は 5952 であり、A=9 の場合は 5992 であり、この二つを比べてみると、千の位と百の位はどっちも同じ 59 である。だから当然 H=5、I=9 でなければならぬ。
「なるほど、これは面白い答だ」
 と、帆村は口のうちに叫んだとき、彼ののった円タクは、新宿|追分《おいわけ》の舗道に向ってスピードをゆるめ、運転手はバック・ミラーの中からふりかえって、
「旦那、この辺でいいですか」
 とたずねた。
 帆村は大切なノートをポケットに収《しま》っ
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