あるのではなかったか。しかし封筒の中にはいっていたのは用箋一枚きりだった。困った」
 袋探偵は行詰って、紙片をいまいましく眺める。
 もうすこしで解けるような気がする。それでいて、手掛かりが見つからない。脳髄がちょっとすねているらしい。
 どうしてやろうか。
 袋探偵は呻《うな》っている……がそのとき彼は声をあげた。
「あ、これかな」探偵は白黒表の最後のところのンを指す。第百字目のンだ。「四角の枠の隅っこにンの字があるのはこれだけだ。他の三つの隅にはンがない。……するとこの窓はうまく明けてあるのかもしれない。……あっそうだ。四角だ。正方形だ、十字ずつの正方形だ。横にしても、さかさにしても同じ形の同じ大きさだから、ぴたりと重なる。よろしい。きっとこれだ。後半の百字を、同じように四角に並べてみよう」

[#ここから3字下げ]
いまけえいつのそさま
じにくぎじあまとんつ
まいせりんこごらみう
いをだいはもらちちの
とれまかてぎをちまめ
ちいもしうととうみけ
してもあえげいこりま
よとすかいるうよれお
いんんうはのなおなす
をとれつこたでれすは
[#ここで字下げ終わり]

 こうしておいて、前半の文字を四角に並べた白黒表をこの上に重ねる。ンのところ――つまり黒丸のところだけをナイフで穴をあけておく。ここに出してあるような形だ。
           3↓
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐
 │■│□|■|□|■|■|■|■|■|■|
 ├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
 |□|■|■|■|■|■|□|■|■|■|
 ├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
 |■|■|□|■|□|■|■|■|■|■|
 ├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
 |■|■|■|□|■|■|■|■|□|■|
 ├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
 |□|■|■|■|■|□|■|■|■|□|
4├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤2
→|■|□|■|□|■|■|□|■|□|■|←
 ├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
 |■|■|■|■|■|■|■|□|■|■|
 ├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
 │■│□|■|■|□|■|□|■|■|□|
 ├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
 │■|■|□|■|■|■|■|■|□|■|
 
前へ 次へ
全13ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング