か。おい、これでいいよ。ありがとう」
ぼくたちは、ここでもまた褒《ほ》められた。褒めてくれたのは、仕上げの熟練工《じゅくれんこう》の木田《きだ》さんという産業戦士だった。
「それごらんなさい。私はこのごろふわふわなんかしていませんよ。木田さん、この次そんなことをいうと、私はあんたに銃剣術《じゅうけんじゅつ》の試合を申込みますよ」若い男は得意だ。
「あははは。銃剣術でお前が張切っている話は聞いたぞ。いつでも相手になってやるが、油を売るのはそのへんにして、早く向うへいけ」
「ちぇっ。木田さんはあんまり勝手だよ。油なんか一滴も売ってはいませんよ、だ」
若い男は、口笛を吹きながら、向うへいってしまった。
それから木田さんは、また暫《しばら》くぼくたちを更にほれぼれと撫《な》で廻していたが、やがてぼくたちを両手ですくいあげると、別の大きな機械台の上へ連れていった。その傍《そば》には、ぴかぴか光った大きな無電装置のパネルがたくさん並んでいた。これは国際放送用の機械であるらしい。
木田さんは、そこにいた仲間に声をかけた。
「おい、もくねじが来たぞ。早いところ、残りの穴へ埋《う》めこんでくれ」
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